Compound – アルゴリズム金利によるレンディング/ボローイング

こちらで紹介したレンディング/ボローイングプロトコルのCompoundを紹介したいと思います。

 

かなり有望なプロジェクトとみられていて、今年5月にシードラウンドで、Coinbaseが出資するVC、Andreessen Horowitz、クリプトヘッジファンドPolychain Capital、ベインキャピタルから計8.2Mドル(8億円超)を調達しています。

 

 

概要

  • Ethereumアセット(ERC20トークン)のためのマネーマーケット*プロトコル
  • マネーマーケットはアセット別(Etherマーケット/Daiマーケットなど)に存在する
  • 各マネーマーケットはアセットの需給に応じてアルゴリズミックに金利が決定される
  • 金利や満期や担保に関する借り手と貸し手の間での個別の交渉は不要(P2Pレンディングのような貸し手と借り手のマッチングが不要
  • ユーザーはトラストレスにトークンをマネーマーケットに供給することができる
  • ユーザーはプロトコルに担保を預けることで、トークンを借り(て、使用し、売り、再貸付す)ることができる

*マネーマーケット:短期金融市場。期間1年未満の金融取引が行われる市場(例:コール市場、レポ市場、オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場など)

 

 

仕組み

貸出

Compoundはユーザーの貸出したトークンを集約し、代替可能(ファンジブル)なリソースとします。これにより完全な流動性が実現し、ユーザーは、特定のローンが満期になるのを待つことなく、いつでもトークンを引き出すことができます。

マネーマーケットはアセットごとに固有であり、独自の金利をアルゴリズムにより計算する。ユーザーが自分の残高を更新するトランザクション(トークンの供給、転送、または引き出し)を行うと、未収利息と元本がユーザーに支払われます。

 

借入

Compoundでの借り入れは、担保付クレジットラインを使用して行われます。満期や借入期間の指定は不要で、ただ必要なアセットを指定すれば即時の借入が可能です。

ユーザーは未払いの借入額をカバーする以上の残高(担保比率)を保有する必要があり、必要担保比率を下回るような行動(たとえば、借りまたは引き出し)を行うことはできません。担保部分についても利息が発生します。

借り手の担保価値が規定の清算率を下回った場合、担保はその時点の市場価格から清算ディスカウントを差し引いて第三者が購入できる状態になります。アセットの価格は、上位10の取引所から価格コミッティがオラクルとして取得したものを使用します。

 

 

ユースケース

貸出

最近減少しているかもしれませんがHODLer(長期保有者)は所有するトークンをCompoundプロトコルに貸し出すことで、利息を得ることができます。

またトークン残高を持つdAppsや取引所も、所有トークンをスイープ*することにで収益源とすることができます。

*スイープ:証券口座には自動スイープサービスというものがあります。これは証券口座に資金を入れておくと、現金として保有している間はMRF(マネーリザーブファンド、超短期の公社債投資信託。利息の非常に小さい普通預金のようなものと考えてよい)として保有し、証券を購入する際には自動でMRFを解約し、買い付け代金に充てられる、というものです。MRFには少額の利息が付くので、これにより資金を無駄にせず効率的な資金運用が可能となります。

例えばdAppsにデポジットされた資産をCompoundで貸出し、引き出したい場合は即時解約することで資金回収することが可能になります。

 

借入

注文の約定やオフチェーンでの操作をせずに、Dappsによるトークン借入(例えばGolemネットワーク上の計算パワー購入する)など、Ethereumエコシステムで使用するトークンを借りることができます。

また、トレーダーは、既存のポートフォリオを担保としてEtherを借りてICOへ投資することができたり、トークンを借りてそれをショートすることができます。

 

 

金利モデル

各マネーマーケットの金利は例えば以下のように算出されます。

1.各マネーマーケット(a)の需要と供給を1つの変数で表すユーティリゼーション率Uを計算する

U(a) = 借入残高(a) / (現金(a) + 借入残高(a))

2.ガバナンス主体(後述)が例えば以下のような借入金利の需要関数を決定する

借入金利(a) = 10% + U(a) * 30%

3.ガバナンス主体が、貸出金利を例えば以下のような借入金利の関数として決定する。Sはプロトコルの経済的利益を表すスプレッドS(例えば0.15)。プロトコルを維持するため、1つのマネーマーケットでの貸付と借入を実施するような攻撃が起こらないよう、貸出利息の総額は借入利息の総額よりも少なくする必要があります。

貸出金利(a) = 借入金利(a) * U(a) *( 1− S)

4.各マネーマーケットの金利は、ユーザーが資産を貸出/回収/借入/返済することにより金利が変化する都度計算されるインデックスによって更新されます。

Index(a,n) = Index(a,(n−1)) * (1+ r *t)

 

 

ガバナンス

初期はプロトコルが中央集権での管理を行い、徐々にコミュニティによって管理するDAO(提案と投票により関連する機能を呼び出すEthereumコントラクト)とステークホルダーによるコントロールに移行します。管理者(DAO含む)は以下の権限を有します。

  • 新しい管理者またはDAOを選定する
  • 各マーケットの金利モデルを選定する
  • マーケットのステータス(Unsupported:準備中, supported:取引可能, suspended:閉鎖)を決定する
  • オラクル価格を設定する主体を決定する
  • プロトコルのエクイティ(利息収入)を引き出す

 

 

まとめ

金利モデルが実際どう決めるのか、どのようなものに決まるのかが重要ですね。上の例はホワイトペーパーのものですが、これだと借りたい人も貸したい人もいないと思います。円の短期金利は日銀の政策等によって決まりますが、アルゴリズムでどこまでうまく調整できるのか、ちょっとわからないです。。

借り入れるのは同額以上の担保がいるところも厳しいですね。清算のリスクが高すぎるので、仮想通貨のボラティリティを考えるとかなり多めに入れておくことになるとすると、資金効率は相当悪くなります。清算されたものを購入するのはうまみがありそうですが。

あと、法的にはグレーで、現時点でどの法律の対象になるか明確ではなく、リスクはあるとCEOも認識しています。例えば日本では短資会社は改正前出資法に基づいた金融庁への届出が必要となりますので、短資会社にあたるとされた場合、違法と判断される可能性があります。

意欲的なプロジェクトだと思うので、ローンチは楽しみです。